●季語『春』
●バスを待ち大路の春をうたがはず 石田波郷
春をうたがわないほど、のどかな日。
バスを待ちながら空を見て、空気を顔に感じる。
作者はこれからどこへ行くのだろうか?
春を「うたがわない」ところが傑作!
●野良着脱ぐや妻の下着の春白妙 香西照雄
春が来たので、そろそろ野良作業が始まる。
自分も妻も、今日は精一杯働いた。
畑の土お越しだ。
明日はたんぼにでる。
今年の秋は豊作だろうか?
さて、今年の春もまた始まったぞ。
●城崎に来て春の少しあともどり 稲畑汀子
城崎は初めて来たところ。
昨日までは春が来たような気配だったのだが、城崎まで来たら、ちょっと寒い。
志賀直哉も大好きな城崎で、何を観て、何を食べようかな。
●瀬戸の海春の小島を浮かしけり 岩田清司
今日は穏やかな一日だ。
海もゆったりと波をうっている。
かすかに見える小島にもきっと春が来ていることだろう。
ちょっと気分も高揚している。
もうしばらく、ここで海を眺めているとするか。
●季語『早春』
早春の湖眩しくて人に逢ふ 横山房子
雪山に春のはじめの滝こだま 大野林火
●季語『春浅し』
きりたんぽきちきち巻きて春浅し 黒沢京子
木の間とぶ雲のはやさや春浅き 三好達治
●季語『余寒』
鎌倉を驚かしたる余寒あり 高浜虚子
●季語『春寒』
春さむや庵にととのふ酒五合 西島麦南
春寒や石のこえ聞く竜安寺 関口加代子
●季語『春めく』
春めきてものの果てなる空の色 飯田蛇笏
●季語『三月』
三月やモナリザを売る石畳 秋元不死男
いきいきと三月生まる雲の奥 飯田龍太
三月の桑畑のぼる男下駄 桜井博道
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